男嫌いなあたし。

「澪…?」

「ごめんっ…。」

あたしは、ぺこりと頭を下げた。

「あのね、あたしね。愁のこと、好き。でもね、泣いても苦しんでも、悠斗じゃないとダメなの。」

こんなことを言うなんて、思っても見なかった。

でもこれが

あたしの嘘偽りない本心。

「だけどね、愁は幼馴染なんかじゃないよ。もっともっと大切な人。」

幼馴染よりもっともっと近くて

家族と同じくらい大切な人。

「…そっか。それが澪の答えなら、それでいーんだよ。悠斗のとこ行ってこい。」

「…愁…?」

「悠斗な、お前のことが好きすぎて、壊しちまいそうで近づけないって言ってた。だから、嫌われてるわけじゃねーんだよ。」

「そう…なの…?」

そんなこと、思ってたの…?

あたしに、近づきすぎて

また恐怖症にならないように…?

そんなことまで、気を使っててくれたの…?

「この辺の近くに、浜辺があんだろ?」

「う、うん…。」

街中をちょっと外れれば、すぐそこに海があって

そこの浜辺には何回も行ったことがある。

「あいつ、そこにいるから。行ってみな。」

「…ありがとっ。」

“頑張れ”

と、またいつの日かのように

背中を押してくれた愁。

あたしは、悠斗のいるところまで

走り出した。

息が切れて、頭がクラクラするのも忘れて

夢中で走った。