隣のスペース


「それで、フラれた夜に栄菜に会って」

そう、あの夜。

琉志先輩が見せた涙。

「栄菜は俺と同じ、意味も分からない恋してて…。」

確かに、私の恋は意味が分からない。

この恋に、愛などという感情は一つもない。

「なんか無性に栄菜に仲間意識みたいなの持っちゃって」

そうだったんだ。

「それで…あんなこと言っちゃった。」

「…はい」

「今、考えたら迷惑だったよね?」

「いえ!全然。」

これは、本心だった。

あの時、琉志先輩に好きという感情はなくても告白されて。
少なくとも私は喜んでた。

…嬉しいと思った。

「そう?だったら良かった」

反応に困った私は、うつむいた。

でも、現に凌はまだ私の彼氏。

そして、たぶん今後も…。

だって、琉志先輩が凌を倒さないと私たちが付き合うことはない。
毎日殴られる、辛い生活が続くんだ。

そう想って、ため息をついた私に

「じゃあ…これからよろしくね。」

そう言った琉志先輩は私の頭を優しく撫でてくれた。

「…えっ?これから??」

「そう。これから栄菜は俺の彼女」

ってことは…

「凌は?」

「昨日、潰しといた!」

そう言って意地悪く笑う琉志先輩。

「平和主義もやる時にはやるんだよ!」

「本当に?本当に私は凌から解放されたの??」

「大丈夫。俺が昨日、これ以上栄菜に近づくなって言ったから!」

もう、殴られることはないんだ。
放課後、自由なんだ。

私は、今までの窮屈な生活から抜け出せて、気がつけば大泣きしていた。