さすがにこの、 大きなショッピングモール中の 時計屋の中から探す気にもなれず 諦めて家へ帰ることにした。 玄関の扉を開ける。 母の靴があった。 …お母さん、 兄が大好きだった母は 相当悲しいだろう。 兄に忘れられてしまうなんて… リビングに行くが、母の姿はない。 今は母しか使っていない 両親の寝室を覗くと、母がいた。 化粧台の前に座って 部屋の電気も付けず。 「お母さん…」 ここでようやく母は 私が帰ったことに気付いたようだ。