ユウは何も知らないから・・・。
でも、今・・・あたしを名前で呼んでくれて・・・。
「どうした?」
優しく守ってくれる。
『ふぇ・・・っっ!!』
自然に涙がこぼれた。
あの事件の前のみんなと同じ、あたしを恐れなくて、仲良くやれていたあの頃のみんなと。
「加奈?どうした?」
ユウの腰に抱きついて、泣いているあたしなんてかっこ悪いって正直思うけど・・・。
今は・・・。
今だけは・・・あの事件の前のあたしに・・・戻らせて・・・。
『ユウっっ・・・!!』
「加奈?お前・・・おでこ超熱いけど!?」
あたしの異常さに気づいたユウは、あたしをお姫様抱っこして階段を下りた。
みんながあたしたちを見ていた。
泣いている顔なんて、見られたくなくてユウのワイシャツに顔をくっつけて見えないようにした。
「加奈っ!家に行こう!?お前んちで良いよな!?」
『・・・うん。』
熱があると、得するなって昔から思ったけど・・・。
今は・・・本当にそう思う。

そのまま、家についてベッドに寝かされたのは覚えてるけど・・・。
その後は、寝てしまって記憶が無い。
目をあければ、昨日のことが夢になってしまう気がして嫌で・・・。
あたしは・・・目を閉じていた。
「加奈・・・?起きた?」
『・・・ユウ。』
「よかった。」
夢じゃないけど・・・なんだか、怖くて。
手が震えるのが分かった。
「加奈・・・。お前さ・・・」
あの事件の話を・・・親がユウに話したんだろうと・・・直感が教えてくれたんだと思った。