彼氏くんと彼女さんの事情



「(怒ってるかなどうしようどうしよう)」




宥めようと試みるが、気の効いた言葉が思い浮かばない。まず、恋愛経験がそれほど多いわけでないため対処法がわからない。




あたふたと言い繕う言葉を探していると。無表情の春川くんが口を手で押さえたままポツリとひとこと、呟いた。




「……痛い」

「ああぁぁぁごめんね春川くん!」

「……痛い」

「だって!春川くんがいきなりエロいキスするからっ…!」

「………」




思わず私がそう口にすると、春川くんは暫く考えるように黙り込んだ。




「………?」



(エロいって言ったから傷付いてるのかな…。)



いきなりどうしたのかと眉を潜め首を傾げていると。



ふいにちら、とこちらに目を向けたかと思うと、春川くんは意味深に口元に弧を描く。




「男はみんなエロい」




悪戯な笑みを浮かべそう口にした春川くんの男の顔に、思わずドキリとする。




「ちょ、ちょっと待って!春川くんそんなこと言うキャラだったの!?」

「……さぁ」




しかしそう興味無さげに呟いた表情は、既にいつものぼうっとしたゆるいものだった。




……何、もしかして春川くんって。




「(二重人格なの!?)」