彼氏くんと彼女さんの事情




「一緒にいてよ。……お願い」




今にも泣きそうな、悲痛に歪ませた表情で呟いた春川くんを見て、胸がぎゅうっと締め付けられたような感覚に襲われる。




思わず私は、春川くんを力いっぱい抱き締めていた。



子供をあやすように、彼の色素の薄い、柔らかく湿った黒髪を優しく撫でる。




「ごめん!ごめんね、春川くん。私も別れたくない!」

「……ほんと?」

「うん」

「……俺のこと、嫌いになってない?」

「なってないよ。むしろ、大好き!」




私がそう言うと、春川くんはふわりと微かに口角を上げた。



先ほどまでの泣きそうな子供のような表情は消えていて、久しぶりに見る、優しく柔らかい安堵の表情。



いつのまにか、私の背中に春川くんの腕が回されていた。




「さゆり、好き」

「………っ!」




ずっと聞きたかった、けれど絶対に聞けないと思っていた春川くんからのその言葉に、胸が弾む。




「(あれ、ちょっと待てよ…。)」



もしかして、夢?



え。ち、違うよね!?


あ、そうだ。机で腰打ったとき、痛かったし!




どうかどうか夢ではありませんように。お願いします神様どうか、




「キスしていい?」

「へ!?」