彼氏くんと彼女さんの事情



駅の近くのケーキ屋さんに来た。可愛らしい、お花の装飾が施されたドアを押して中へ入る。



ここは最近オープンした店で、一度だけ来たことがあった。




私たちは入り口から近い丸テーブルに腰掛け、メニュー目を通す。




「チョコケーキにしよっかなぁ」

「俺、ショート」




ケーキを決め、注文しようと周りを見渡したら。




「「あ」」




入り口から入ってきた数人の女の子のうち一人と目が合い、同時に声を発した。




「さゆり?」

「綾香じゃん!」




綺麗な長い髪の女の子が、嬉しそうな表情でテーブルとテーブルの間隙(カンゲキ)を縫って、私の座っているところまで来た。




「久しぶりだね」



この可愛らしい女の子は、夏見綾香(ナツミ アヤカ)。中学時代の友達だ。




「もしかして、彼氏?」



私の向かい側に座る春川くんに気づき、綾香が私に小声で耳打ちした。




「そうだよ!」

「うそっ!?すごいかっこいいじゃん!」




そう言われると嬉しい。春川くんを褒められて、私は照れた。




「デート?いいなぁ、ラブラブで」

「あはは」




……デートといっても、忘れられてたんだけど。



それに、どう考えても私と春川くんがラブラブだとは言い難い。