彼氏くんと彼女さんの事情



「ね、これからどこいく?」



ジャージ姿なのが気になるけれど、この際なんでもいい。折角(セッカク)、この超絶マイペースな春川くんがここまで来てくれたことだ。



悲しいことに、私服で会えるチャンスなんて、もう二度とないかもしれない。



などと考えている私に、さも当然というような表情の春川くんが言った。




「家に帰るけど」


「え!?」




……嘘でしょ!?


デートするために、来てくれたんじゃないの?




「ここまで歩いてきて疲れたから、帰って寝る」




眠そうに欠伸(アクビ)をしつつ、既にUターンしようとしている春川くんの腕を、私は咄嗟に掴んだ。




「甘いもの、好きなの?」

「?うん」

「私、最近できたおいしいケーキ屋さん知ってるんだけど」




どうだ。



「……行こ」




よし、食べ物で釣ってやった。