精神的にダメージを受けながらも状況が解っていない春川くんに説明する。



「あの。昨日、春川くんに告白して彼女になったんだけど……」



すると数秒考え込んだ後、「ああ!」と、急に思い出したように顔を上げた。




「そういえば昨日……。名前、……なんだっけ……?高橋、さつき?」

「……中原さゆりです」




はとさしか合っていない。


春川くん……。わ、忘れっぽ過ぎる……!!




「……あー、中原さゆり、ね。そういえばそんな名前だった気がする」

「………」




春川くんの言葉に心を折られている私には気付かず、鈍感な彼は一人納得したご様子。




私、春川くんの彼女になったんだよね?




「で、何か用?」



無表情で問われ、私は聞きたいことがある事を思い出した。



「……あの、メアド教えて欲しいんだけど……」

「……あぁ、」




遠慮がちに言うと、面倒臭そうにポケットに手を入れ携帯を探し出した。



右のポケットには無かったらしく、左のポケットに手を入れ変える。しかし左のポケットにもお目当ての物は無かったらしい。




「……忘れた」

「…………」