「(綺麗……。)」




思わず見とれていると、ふいに春川くんの手がピクリと動いた。



「!」

「うーん…。」




眉を寄せ不機嫌な声を出す春川くん。呆気に取られていると、突然パチリと目が開いた。




「!!」

「………。」



ぼうっと、焦点の合わない瞳で私の方を見ていたと思ったら、急にムクリと起き上がった。



寝ぼけ眼で眠たそうに欠伸をする春川くんに咄嗟に声をかける。




「お、おはよう春川くん!」



すると今初めて私の存在に気付いたらしき春川くんがパッと顔をこちらに向け、視線が交わった。



春川くんは不審な表情で私を見据え、私は慌てて言葉を続ける。




「あ、ごめんね、起こしちゃったみたいで」

「………」

「春川くんいつも眠たそうだよね」

「………」




緊張してべらべら話す私の言葉には一切返事をせずに、終始不審な表情を続ける春川くん。



あれ。なんか様子が変…。




「……あの、昨日メアド聞き忘れたから、」

「誰」

「え?」




……もしかして。


一つの不安が頭を過った。しかし、そんなわけはないだろう、と直ぐにそれを打ち消す。



が。



「……誰?」

「………」




否、やはり。



忘れられていたらしい。