彼氏くんと彼女さんの事情



「あいつに、何か言われなかった?」

「えっ、何で?……な、何にも言われてないよ」




嘘を吐いた。


本当の事を言ったら、高貴はナツミさんに怒るかもしれない。ナツミさんの事を、嫌いになるかもしれない。



好きな人に嫌われるのは凄く辛いと思うから、内緒にしておくことにした。




「いや、携帯取りに行ったとき、あいつの様子おかしかったから。……ごめん、その後ナツミに告られた」


「え!そうなの!?」




やっぱりナツミさんは高貴の事が好きだったんだ。電話の事、言わなくて良かった。




「黙っててごめん。勿論、断ったから」



高貴が申し訳なさそうな表情で謝る。




「ううん……。でも、何でバイトの事とか、ナツミさんと同じ中学とか、嘘吐いたの?」




一番気になっていたことを聞いてみた。


それならそうと言ってくれれば良いのに、と。