彼氏くんと彼女さんの事情


* * * *


寝不足で頭が痛い。



「どうしたの!?すごいクマ」

「…………」



昨日は眠れなかった。目の下にはクマが目立っている。




「高貴は浮気なんてしない、高貴は浮気なんてしない、高貴は浮気なんて…」

「……ね、どうしたの?」

「…………っ」




さゆりが心配そうに声を掛けてくれたが、それに答える余裕は無かった。




「……高貴はね、いっつも嘘吐いてくるけど、私を裏切るような嘘は絶対吐かない」

「?うん」




そうだよ。


私がナツミさんの言葉なんて信じなければ良い。


ナツミさんの言ったことは全部、嘘なんだよ……。





「上坂どうした~?」



今日もテンションの高いヤスくんが私の席に来た。ヤスくんは私の目を見て驚く。



「えっどうしたそのクマ?……あ、もしかして昨日の夜の」

「え?」

「昨日学校で言ってた、ナツミって奴の事だろ?……大丈夫、気にすんなって。学校帰りにたまたま会っただけかも知らねーし」




学校帰りにたまたま会った?誰が、誰に?


訳がわからず混乱していると、ヤスくんは「あぁ、ごめん」と言って説明し始めた。




「昨日の夜、塾の帰りに萩峰とそのナツミって奴が一緒にいるところ、見たんだよ。女の子っぽくて、可愛い子」

「……え」




そんなの、知らない。




「……そうなの?」

「……え?……もしかして、知らなかった?」




涙目で頷くと、ヤスくんは慌てて謝り、私を励ました。



「あー、ごめん!大丈夫、たまたま会っただけだって!」