彼氏くんと彼女さんの事情



気が動転しつつも、少し間を置いてもう一度問い掛けてみる。



「……ねぇ……、どういう、」


『私……、高貴くんと付き合ってるの』






“私、高貴くんと付き合ってるの”




………!??



「え!?」




何言ってるの?




「高貴と付き合ってるのは……私、だよ?」


『もうあなたの事は好きじゃないって。今は、私の事が好きだって言ってた』




嘘だ。高貴がそんなこと言うわけがない。




「そんなわけない!高貴が、貴女の事ただの中学のクラスメートだって言ってたもん!」


『……?私は高貴くんと同じ中学じゃないけど』

「………え」




この人の言っていることは、本当なの?中学のクラスメートじゃ、無いの?



訳が分からなくて、パニックになる。涙がじわりと滲んで、視界がぼやけた。

私は携帯の向こうに向かって叫ぶ。




「で、でもっ…高貴は私と付き合ってるの!浮気なんてするわけ無いもんっ…」

『私達、毎日朝も放課後も会ってる。……高貴くんは私のモノだから』




プツンと音がして、電話は切れた。手の力が緩んで、するりとベッドの上に携帯を落としてしまう。




しんと静まり返った部屋で一人、私は身動きが取れなかった。




「嘘だ……、高貴が浮気、なんて……」