「そのナツミって子がどうしたの~?」
今度はさゆりに話し掛けられて、前に向き直る。
「別に、特にどうしたとかはないんだけど……高貴の、中学の時のクラスメートって」
うん、そう。ナツミさんは、ただの高貴の中学の時のクラスメート。別に昔のクラスメートと街中で会うことなんて、よくある事だ。
さゆりに説明しながら、私は少しのモヤモヤを打ち消すように心の中で言う。
さゆりは私の言葉にふぅんと呟いた後、何にしても、と話を続けた。
「優愛が寂しい思いしてるなら、ちゃんと高貴くんと、話した方が良いよ」
「頑張れ!」
「……うん、そうだね」
二人に言われ、高貴と一回ちゃんと話してみようと思った。
別に、高貴を疑うなんて事絶対に、ないけど。
* * * *
「(もう、部活終わってるかな…)」
今は午後7時。私は携帯を握り締め、自分の部屋のベッドに腰掛けていた。
「(やっぱりまだ部活中かなぁ。…晩ご飯の後に掛けようかな…)」
暫くベッドの上でゴロゴロした後、やはり取り敢えず一回電話を掛けてみようと思った。
電話に出なくても、後で不在着信に気付いて掛け直してくれるだろう。
そう考え、私は携帯の電話帳を開き“萩峰高貴”に電話を掛けた。

