彼氏くんと彼女さんの事情



初耳だ。


しかしそういえば、一年の頃よくヤスくんがうちの教室へ遊びに来て、高貴と話していたなぁ、と思い出した。




「同中かぁ、高貴と仲良かったもんね。……あ」



ある事を思い出し、ヤスくんに聞いてみようと思い立つ。


特に意味は無いけれど。




「ナツミって女の子知ってる?多分、高貴と同じクラスだったと思うんだけど」

「ナツミ?名字は?」

「名字は分からないけど……黒くて長い髪で、女の子って雰囲気で、……すごく、可愛い子」



訊いてみたは良いが、下の名前以外何も、ちゃんとしたその子の情報を知らないことに気付いた。



アバウトな説明にヤスくんは首を傾げる。




「……いやぁ、分からないな……。アイツとは二年同じクラスだったし、可愛い子なら絶対に知ってる筈だけど……」



あぁ、一年の時も、全部のクラス回って可愛い子チェックしてたもんね。




「まぁ、俺が知らないだけかも。……その可能性は、低いけど」

「……そっか」




少しモヤモヤした気持ちが胸を霞める。


でもきっと、ヤスくんが知らないだけだろう。何も、気にする事なんてない。