キャップを閉め、背もたれへと体を預ける。 視線だけを巡らせれば、もうそこには地元の影すらなかった。 辺り一面緑に包まれている。 覆い尽くすように並ぶ山々が作り出す景色だ。 あたしはこれが嫌いなのだ。 全てから隔離されたような、この威圧感を誘う空間が。 どことなくあたしを心細くさせる。 息苦しさを覚える。 「ほら、着くよ」 「…はーい」 あたしは素っ気なく返事を返すと、ワイシャツの第一ボタンまでしっかり閉めた。 息苦しいが、こればかりは何とも言えない。