「私……昨日、親にすんごく怒られちゃったんだ。」
「……。」

「何処に行ってた!心配したんだぞっ!……ってさ。」

「…………?」

「そんなに……私の事を想ってんだったら…………子供にいつも気を使わせているくらい」

気付いてよ。

私は、自然と涙を流していた。無意識の内に…大粒の滴がパラパラと…目から溢れては、スカートの上に降っていた。

涙は拭かない。

拭いたら…一番恥ずかしいところを見られてしまう。ピエロなんて、居るも居ないも同じ。

別に、泣いている姿を見られたくないなど思わなくていい……私は、プライドを持って……

……………


自分の視界に真っ白な光が…涙が滲んでモヤモヤしてはっきり見えなかった。

やがてそれは、はっきりと目に写る。

真っ白なチューリップの刺繍が入ったハンカチーフ。
左手でそれを差し出しているピエロは、あっちを向いたまま。

私は両手でそれを受け取ると、ギュッと握り「チューリップは…時期外れだよ。」と言った。

すると、こっちに顔を向き直し…首を少し傾けて

顔を笑わせた…多分。


私も、思わず笑った。



帰り道。

親が向こうの方から、私の顔を見るなり、走ってくるのが見えた。

「あーあ、怒られる…」

「亜依っ!!」

私は思わず目を瞑る。

「………………?」

目を開けると、両親は笑っていた。それから……誉め言葉。

「亜依。自分で作ったのか、その髪飾り。可愛いな。」

「え?」

恐る恐る、頭に手をやると…何かが触れるのを感じた。

「向日葵畑に行ったのは分かったが…次からは、一人で行くときに、言いなさい。」


髪飾り、それは……一輪の向日葵。