「やだっつってんだろ…」

「あ、その顔他の奴にしないでね。かなりそそられるから」

「そんな顔してないから。妄想乙」


口では軽く言ってる。
でも事態は軽くなんかない。ものすごく危険だ。

だって考えろ?
ここは俺の部屋で、俺は一人暮らしで。つまり他には誰も居ないわけで。
で、部屋だからベットもすぐ近くにあって……てか、今。まさにこの瞬間に押し倒されたんですけど。


「ではでは、いただいちゃおうかなぁ★」

「いただかないでください。俺は生憎食べ物じゃないんで」


どくどくと高速で打っている心臓をかくして、目を合わせないように言う。


「その態度は反則だなぁ。逆効果」

「は?何言って……」


馬鹿じゃねぇの。という言葉は言えなかった。
なぜなら今俺は、ファーストキスを取られてる真っ最中だから。

…って。
まて、冷静に考えろ。
この状況はなんだ。なぜ一馬がこんな近くに居るんだ。

あぁ、それは俺がファーストキスを取られてる真っ最中だから……って。

そーじゃねぇよ!!
アホか俺は!キスされてんだぞ!?


「んーんー!!」


とりあえず、一馬の胸板を叩いてみる。
結果、無視。

おい!無視すんなよ!
酸欠だっての、死ぬっての!


ようやく離してもらえたときには、もうぐったり。
まるでマラソンでもした後のように呼吸が乱れてる。

そんな俺とは正反対で、一馬はケロっとして満足そうに俺を眺めてる。

なんでここまで違うんだよ。
まじ憎い。


「いやぁごめんねー。あまりに可愛くって」

「っはぁ…ざけんな」

息切れハンパねぇよ俺。
情けね。