とりあえず今にでも飛びかかってきそうな一馬の腕を必死で押し返す。
一馬はニコニコ笑いながら俺の手を引き離そうとする。

こうゆうとこもムカつく。
この馬鹿力め。どこにそんな力持ってんだよ。
てか笑顔こえぇぞ。なんか黒いぞ。


「しょーうー。もう十分喋ったからさ、いい加減着替えてくれる?」

「なんで怒ってんだよ。怒りたいのこっちだよ」


一馬の声が少しだけ低くなる。
冗談抜きでちょっとヤバい感じがする。


こいつには変人って事意外にも決定的な汚点がある。
それは、


「だって翔が言うこと聞かないから」


かなりのジャイアニズムってこと。


まぁあれだ。
『お前のものは俺の物。俺の物も俺の物』ってやつだ。
だけど世間の女子はこれを『俺様』と呼んで汚点を美点に変えちまう。

これもイケメンの特権か。
お前なんかこわいお母様に泣かされちまえ。


なんて言えるわけねぇ。


「翔。さっきから俺は絶対似合うっつってんだろ。だから着ろ。今すぐにだ。
なんなら着替えさせてやってもいいぞ」

「最後の一文だけは絶対にお断りだ」


余裕っぽく冗談かましてみたはいいが、心内は慌てふためいている。
以前俺が一馬のいう事聞かなくてキレる寸前まで追いやったことがあった。

なんだったけなぁ…。
あーたしか、しつこく何回も何回もセーラー服着てくれって頼まれて。
俺が無視し続けてたらいきなり服破られた。
俺がこんなに頼んでるのに無視してんじゃねぇぞ、って言われた。

むっちゃ怖かった。
殴ろうかと思ったけど、前のクラスメイトから聞いた噂を思い出してやめた。

まぁ着なかったんだけど。
脱走したんだけど。


なんで俺まだこんな奴と付き合ってんだろ。
てかなんでこいつも俺と付き合ってんだろ。