「とりあえず部屋入れてくれねぇ?」

「…変なことすんなよ」

「りょーかい★」


地球温暖化と騒ぎ立ててる現在だけど、やはりこの時期になると寒くなるわけで。
若干寒そうにしていたこいつを部屋に入れる。

寒がりな人を寒いなかで放置するほど俺は冷酷じゃない。
テンションが低いのは、テンションの高いバカに毒されたとでも思ってくれれば幸いです。


「おじゃましまーす!
てことで、これ着てくんねぇ?」


目の前に差し出された紙袋を一瞥。
そして突き返す。


「着ない」

「着てほしーなー」

「断固拒否」


着ない。俺は絶対着ないぞ。
ちなみに紙袋の中身教えてやろーか。
フリルが付いたスカート(めっちゃ短い)と、ノースリーブのなんか。
いや、だって俺男だし。女の服とかよく分かんないし。

とにかくコスプレってことは分かった。
ご丁寧にカツラまで入ってたぜ。


これを着ろと。
この俺に。こんな、美形でも可愛い系でもない平凡に着ろと。


「俺が着たって目に毒だろ。お前の方が似合うと思う」


さりげなく褒めとけばこいつも機嫌良くして、着なくて済むことになるだろ。
という俺の策。


「褒めて機嫌取りすれば許されると思うなよ?」


通用しなかったようだ。


「着たくないんだよ」

「着ろ」

「イヤっつってんだろ」


一向に終わらない口論。
なんだかバカバカしくなってきた。

溜息をついてこいつの目をまっすぐ見る。

ムカつくほど整った顔。
ほんと殴ってグチャグチャにしたいぞ。羨ましすぎんだよこのやろ。