ハッピーハロウィーン★【BL】

「着ない」

「なら帰るぞ」


え、な、なんでこのタイミングで帰る!?
おかしくね?


「か、帰るのか?」

「あぁ、でも翔が着てくれて俺と一緒に写真に写ってもいい、っていうなら残るけど」


…そーゆーことか。
なるほど。帰ってほしくなければコスプレしろと。
あの屈辱をもう一度味わえと。


「いやだ。着ない」

「そうか、じゃあ俺は帰るなー。そんじゃっ」


俺の一言でささっと帰って行ってしまった。
あまりにあっけなさ過ぎて呆然。

…やっぱ着ればよかったかな。
いや、でも、俺は着たくなかったし。人の嫌がることはするなって学校で習ったし。
……いつのときの話だよ、って感じだけど。


「……だってしょうがねぇじゃん。分かんないけど好きなんだもん」


顔をシーツに埋めて隠しながら呟くと、バン!とドアが開いた。
驚いて顔を上げるとそこには、帰ったはずの一馬が。


「な、おまえっ!?」

「ごめんなぁー翔!お前がそんな可愛い事言ってくれるとは思ってなくてさ。
ほんとはまじで帰ろうとしたけど、今の呟きが聞こえてダッシュで戻ってきた!!
お前やっぱ最高!超可愛い!!」


そしてダダダダッ、って走って来て抱きつく。
正直苦しい。けど嬉しいから黙っておく。


「もーほんと、なに。すっげぇ萌えた。強気な翔が語尾に『だもん』だよ?しかも落ち込み気味に。これが萌えずにいられるかっての!」

「…ちょっと黙れ、一馬。流石に引くぞ」


変態チックな発言をした一馬は、一向に離れてくれる気配がない。
ちなみに黙る気配もない。


「翔ったらいつの間に俺の萌えポイントを知っちゃったの?でもどーせなら魔女っ娘で言ってほしかったなぁ」

「まじで黙ってくれ。着ないから。あれ、お前に返すから」


そう言うと、一馬はキリっとした顔でこっちを真剣に見てきた。


「だが断る。シャキーン」

「シャキーンじゃねーよシャキーンじゃ。自分で言ってどーすんだよ」

「着てもらえると大変ありがたいんだが。シャキシャキーン」


シャキシャキーンじゃねーよ。なんだよシャキシャキーンって。
美容師かっての。てかどんな美容師だよ。カッコつけすぎだろ。
(はさみ二刀流で腕交差させて構えている美容師をご想像ください)