一馬の口を塞いでた俺の手が、一馬の手によってはがされる。
これまたあっさりとはがされてしまったのが、悔しいが、ニコニコ微笑む一馬は顔を近づけてくる。

「あとねー、今みたいにめちゃくちゃ照れ屋なとこ★」

「っーー!!ばかっ、顔近いっ!」

「ほら超可愛い」


しきりに微笑ながら可愛い可愛いと連呼してくる。
…まじでやめてください。

おそらく漫画やアニメだった場合、俺の顔からは蒸気が出てきてるんだろう。
冗談抜きで恥ずかしすぎる。
羞恥心で気絶できるぞ。


「はい、俺は教えたよー。
だから次は翔が好きになった理由教えて?」

「…決定事項?」

「うん★」


一馬は未だに、にこにこニコニコにこにこ……エンドレス。
だがその笑顔の裏には黒いものが見え隠れしている。
言わなきゃやばい。


「ほんとに言わなきゃだめ、か…?」

「うんだめ。てかそんな可愛い言い方しないで。いじめたくなる」


最後の方は聞かなかったとして、どうやら言うしかないみたいだ。
いや、でもさ、俺……わかんねぇ。


「一馬、怒るなよ?」

「うん、怒らない」

「…わかんねぇ」


また、暫しの無言。
恐る恐る一馬を見ると、見事なまでの間抜け面だった。

「どゆこと?」

「いや、だから、わかんないんだよ」

「けど好きなの?」

「う、うん…。
理由はわかんないけど、一馬が好き…で、す」


やべー、俺何言ってんだ。
まじ柄じゃねぇ!うわぁ、顔が熱い!!

「翔、顔上げて?」

「いや」

「いいから」


絶対顔赤いから見られたくないのに。
一馬の声がちょっと『裏』に行きかけてたから、言われた通り顔を上げると、いきなり、本当にいきなりキスされた。