窓からそっと中を覗いた。
あぁ、またアイツか。いつもそうだ。私が店の窓から覗くとカウンターの左端に座っている男。残念ながら男の顔はここからでは見えないのだ。

優雅に座って足なんか組みやがって、
偉そうな男だ。

私はあの男が大っ嫌いだ。
ほら、また彼女が笑った。私にも彼女は微笑んでくれるが、あの男とは違う種類の微笑みだ。
本当に嬉しそうに幸せそうに笑うもんだからいつも邪魔出来ない。外から見守るしかない。

さっさと出てけ、とも思うが男が出ていった後の彼女の顔は少し寂しそうだから、もう少し居てもいいぞ、とも思う。

なかなか大変だ。

私はどうすることも出来ないのだから。


カランコロン、小さく音がなり店から男が出てきた。

「また居るのか。黒猫」

「ニャー(大きなお世話だ)」

「お前、この店の店主が好きなのか?」

「ニャー(それはお前の方だろう)」