素直に甘党である事を認めればいいのに。
彼にコーヒーを注ぎながら思う。
叶うならばいつまでも彼にコーヒーを淹れていたい。
彼のためだけに、
苦手なのにそれを隠して(本当は隠しきれてないけれど)私の注ぐコーヒーを飲んでくれる愛しい彼に。

「私も隣で飲んでいいかしら」

「働けよ」

「今お客さん貴方しかいないから」

無言のままそっと椅子を引いてくれる彼の優しさに今日も甘える。

隣り合う距離の隙間は僅か10センチ程。

隣にいても確かにある絶対に埋まらない隙間。

貴方はとても優しい人だけど、その優しさは時に残酷で針を刺されるように痛みを伴うの。

「甘いな」

「チョコレートだもの。ブラックコーヒーが良く合うでしょ?」

「あぁ」

そういいながらブラックコーヒーを飲む横顔に今日も私は夢を見る。

この距離がゼロになればいいのに。


終わり