「ねぇゆうま、人間界ってどうやったら行けると思う?」
幼馴染のくりくりの瞳がさらに大きく真ん丸に開いた
食べていた昼食のチャーハンの米も、スプーンから皿へと落ちる
「なに馬鹿なこと言ってんの」
「えっ、なんで?」
「授業をちゃんと聞いてないからぁ!!」
眉間にしわを寄せて怒るゆうまが可愛い
自分では気づいてないと思うが、
ゆうまはクラスで「可愛い系男子」と呼ばれる人材だ。
「ゆうまが怒っても怖くないもーん」
「違うだろ!ここのページの上から6行目の文章、読んでみなさい」
バックから分厚い教科書を取り出してあるページを開き、指差した文章は。
『とうの昔、人間界に行こうとした無謀な魔法氏がいた。
他界への行き方がわからず途方に暮れた魔法氏は、自分自身に魔法をかけた。
「この体を、人間界まで連れて行くことを命ずる」。
すると人間界に贈られた体は死体となり、魔法服を着ていたそれはたちまち有名になった。
魔法界が晒される危機となったが、
魂のみ魔法界に残った魔法氏は、魂と引き換えに魔法界を守った』
「・・・ところで魔法界を守ったってどういうこと?」
「本当かどうかわ知らねぇらしいけど「魂は人間界を包み、人間の記憶を操作させた」って、先生言ってたよな、」
「忘れさせたってこと?死体はどうなったの?」
「えっ・・・さぁ・・・・・・って、わかっただろ!人間界に行こうとすると、こうなるんだぞ!!」
「「体と、魂を連れて行く」って唱えるのは駄目なの?」
ついに持っていたスプーンまでも落とし、唖然とした顔でこちらを見つめてくる
「そんなことを考えた魔法氏は、何千人といた、でも、一人も成功しなかっただろ」
「どうして?」
「かならず、失うものがあったんだよ、人間界に行ってから・・・。」
失うものって?
私は聞けずに、黙ってしまった。
ゆうまは、真面目な顔つきで言った
「絶対に人間界なんて言っちゃだめだ。なにかを失うなら、この世界にいた方がいい」
ゆうまの言っていることは正論かもしれない
しかし、魔法界の訓練は過酷なもの
表向きは普通の学校、裏では魔法で痛めつけて強くする
汚い指導者達が、権限を握っている
今でもその傷は消えない
苦しいのだ
本当は、逃げ出してしまいたい
「だから、行きたいんだよ」
「え?」
なにかを失うものがあっても、ここから抜け出せるなら
「いいよね」
「・・・まりあっ!?」
ごめんね
