「敷物持ってなくてこれでごめん」


俺はスポーツバックの中から替え用のタオルを出し、その場にひいた。


「えっいいよそのまま座るから。」


「大丈夫、汗拭いた汚い奴じゃないから。」


俺が慌てて言うと堺は吹き出し笑った。


「ありがとう。じゃあ座らせてもらうね。」


そう言って並んで座った。



目の前ではキャラクターの形の花火がいくつも打ち上げられていたが、それはことごとく逆さまで笑えた。



ドーン!


一際重低音の爆音と共に、柳のようないくつもの光の筋が空から流れ落ちていった。



時々聞きづらくて顔を寄せ合いながら、俺と堺は色々質問し合ってはお互いの事を話した。



終盤に差し掛かり滝をイメージした花火に辺は歓声に包まれた。



「本日最後の花火となります。」


遠くの会場から、この日最後の花火を告げるアナウンスが聞こえてきた。


「もう最後になるんだね。」


遠くを見つめる堺の横顔を俺は見ていた。


ずっと見ていたかった。このままずっと。


離れていた手をもう一度引き寄せた。


振り向く堺から目を逸らさず、見つめた。



少しづつどちらかともなく近づいて。


鼻先が触れ俺は堺を抱き寄せた。


「もっと早く伝えればよかった。もっと早くこうしたかった。


堺がいたからやり直せた。堺がいたから自分を見つめ直せた。


堺がいたから、俺の人生捨てたもんじゃねぇって思えた。


堺がいたから、もっと生きたい。生きたいって思えた。」



泣いている顔を見られないように、俺は堺を強く抱きしめた。



「大好きだ。ずとずっと堺が好きだった。」


ドーン!!


最後に打ち上げられた花火で辺りが黄金色に輝いた。


最後の花火とともに俺は心の中で「ゲームオーバー」を告げた。