太陽がジリジリと真上から照りつけ、陽炎が地面からの熱を目に見える形にして揺らめいた。


いつものメニューでダッシュを始める中、俺は今自分がいる位置を確かめるよう動けずにいた。



「お~!珍しい顔じゃないか~!明日から夏休みだけど、お前は長い休みがやっと終わったか。」



谷口は首にタオルを巻きながら歩いてきた。


不意に母ちゃんやおばちゃんに勝手な想像をされていたことを思い出し笑いそうになった。



「随分サボってたから体がなまってんじゃないか~ホラ!ダッシュだダッシュ!!」


谷口は追い払うように手を振った。



俺は他の奴らと合流しダッシュした。


何度もダッシュを繰り返すうち照りつける太陽の熱が絡みつき動きづらくなっていた。


俺はどんどん他の奴から差をつけられていった。



1周遅れでダッシュを終えると息を整える間もなくパス練習にうつった。


離れていたブランクで、他の奴より体力が落ちていることは覚悟していた。


でも…こんなにもとは。



桜井と組みパス練習をした。


思うような場所に蹴られず随分桜井を走らせてしまった。



昼過ぎから始まった練習は休憩をはさみながら夕方まで行われた。



動くうちに俺は少しずつ感を取り戻していった。


影が伸びる頃練習は終わった。



「結構な練習内容だろ。なかなか勝てないけどお前が抜けた後桜井が頑張ったんだぞ。」


谷口は背中をバシンと叩き手を振り校舎へ帰って行った。



桜井は他の奴らとじゃれあい笑っていた。



グランドならしを終え部活は終わった。


着替えを終え部室を出た頃には空がオレンジ色に広がっていた。


「じゃ明日8時には集合な~。」


心地よい疲労を感じながら俺と桜井は他の奴らを見送った。


「お疲れ」


「おう」


「明日筋肉痛だべ」




桜井はいつものようににやけた顔で言った。




「お前が抜けたからってまたクソみないな部活になったらお前がかっこよすぎるべ。お前の休憩時間のお蔭で俺もそれなりになってるから本気で頑張れや。そんじゃ明日な。」



桜井は手を振り帰って行った。



俺は、夜を引き連れ沈もうとしている太陽を見つめ、しばらく佇んだ。



空が夜の紺色のグラデーションを広げると全てがシルエットに変わっていった。



そのシルエットの一つが規則正しいリズムを刻み走り続けていた。



疲れているはずの体なのに心臓がテンポを上げ高鳴った。