走り寄り、黒ケンのズボンにしがみ付き、桜井が金網から引き離そうとした。




「離してください!!!離してください!!」




「早まるんじゃね~よ!!下りろ!!オイ!!」




しばらくやり合い、黒ケンと桜井は重なりあうように転がり落ちた。





「死のうなんて思っていません・・・・・死ぬ勇気さえ・・・・僕にはないんです・・・・」




黒ケンは仰向けで目を腕で隠し、途切れ途切れに話始めた。


「死んでしまいたい。どうせ死んだ所で誰も悲しんだりしない。死んで解放されたい・・・・・そう思って毎日ここへ来るんです。・・・・・

でも・・・金網を上り下を見ると、痛いんだろうな・・・・怖い・・・・そう思って・・・・結局死ぬ事ができないんです。・・・・どこまで僕は情けないんだろう・・ウッ・・・ウウ」




そういうと黒ケンは嗚咽を上げ泣き出した。





「死なない方がいい・・・・死んだらそれでお終いだ。」




俺は黒ケンを見下ろす感じで頭上に立った。


「生きていたら選択肢がいくらでもある。・・・でも死んだらそれで終わり。


お前、今以外の選択肢を選んだ事あるのか?


選べないんじゃなくて、選ばないんじゃないのか?」




その言葉は、黒ケンと自分へ向けていた。




黒ケンは腕を上げ俺を見上げた。




「あっ・・・さっきの・・・・パンありがとう・・・」





どこまで律儀な奴なんだろう・・・。