｢咲はいないよ｣

やっぱり…

咲にどことなく似ている表情を歪めながら俺にそう告げたのは

咲の母親

｢どこかこころあたりはありませんか｣

｢さあね｣

｢…わかりました。すみませんでした｣

帰ろうと振り返る

いないとはわかりつつも他にはもう心当たりがなかった

最後のわずかな望みを持ち来たのは間違えだった

｢ちょっと！｣

｢ん？｣

｢まちな｣

咲の母親はあたまをかきながらだるそうに俺の目の前にきた

｢私は自分の母親にも勘当されてるんだ。で、しばらくあの子の曾祖母にあたる人にやっかいになったことがある。長野だよ。｣

｢…ありがとうございます｣

｢親に愛されたことがないと…愛しかたもわからない親になってしまうんだよ…。なのに愛への欲は…人一倍大きくなってしまう…｣

｢……｣

｢それでも愛に満たされたことはない｣

｢…私の父も同じでした｣



咲

咲はきっと愛されているんだ

今からその愛を伝えに行くよ