慌てた女房が立ちはだかり「姫さま、顔、顔!」と言われて扇で顔を隠す。 なんとまあ、見惚れてしまった自分が情けない。 「何者です」 「向かいの廊下から、泣いているのを見て」 「ですから」 女房の質問には答えない。かわりに困ったような顔をした。それに思わず頬を染めて怯んだ女房。 男は私に布を渡した。 どうやら歌会に出席していた男のようである。 「こんなところで何を?娘たちも歌会をしているのでは」 「えっと」 「姫さまはご気分が優れず、歌会の席をはずされたのです」