いっそこのまま何処かへ行って死んでしまえたら、と思う。 必要とされたい。 愛されたい。 でも私は……。 「そんなに強引に目を擦ってしまわれては、目が腫れてしまいますよ」 すっと差し出されたのは、布。 はっとして相手を見ると、思わず見とれてしまうほどの男だ。凛々しい顔と、涼しげな目元。私的な正装である冠直衣姿だった。 まさに美男子としか言いようが無い。 彼ならば、女性が恋い焦がれる殿方の一人になりそうだった。