「姫さま!あんな輩のこと、気にしてはなりませぬ」
「……」
「あのものたちは、本当の美しさを知らぬのですよ!」
女房が怒っている。
それがまた、どこか悲しくさせる。
ひとりになりたいけれど、ひとりは怖い。
廊下に出ても行き場所なんてなかった。父上の元に戻るか?でも今父上は歌会を楽しんであられるだろう。
あまり人の通らない廊下で佇むと、鳥の声がした。
ああ、鳥ならこんな思いをせずに済んだだろうか。
涙で濡れた頬を、いささか強引に拭う。
こんな涙など流したところでいったい何になるというのだ。
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