部屋でぼんやりとしている中、届いた文を手にしていると、几帳ごしに声がかかった。
どきり、と体が強張った。
ついに、来たらしい。
「藤の君」
「は、はい」
気遣うような声に、我にかえった私が返事を返す。
今までは御簾があげられ無防備だ。几帳げしに感じる人の気配に、私は強張る。
そして、几帳から姿を見せることが、怖くてできない。
歌会のときにすでに、見られているというのに。
「あ、の」
「成正、と呼んで下さい、藤の君」
「……、どうして私を」
「私の心に、偽りなどありませんよ。貴方を初めて見たときから」
「歌会のとき、ですか」


