醜女と呼ばれた姫








 内裏を歩くと、御簾の中から黄色い声があがる。







「成正さまはいつ見ても素敵よね」

「まだ奥さんいないんでしょう?ああ、なりたいわあ」

「なれるものなら、私がなりたいわよ」

「あら、貴方はいるじゃないのよ」







 男はそんな声に一切耳を向けず、歩いていく。用事は済んだために長居は無用だった。

 あまり長くいると、女たちの声がやかましく思えてならない。





 男はとある人物の家に向かっていた。

 牛車に乗り、その人物の家を訪れた。その邸の主にすすめられるがまま、ともに碁を打っていたときだった。