父上か、と思った。
私がいるのは父上の別邸だ。父上はしばらくこちらには来ない。
その文には、花が添えられている。その花を女房に渡し、開く。
香のにおいがした。
いい香りだ。さっきまでの悪夢が和らぐ気がした。
「先日は泣いていたようなので、目が腫れていないかと心配です……?」
「ひ、姫様それって先日の!」
あの男か。
でもなぜ……?
私の素性を知ったのだ?
名前からだろうか。だが同じような名前を持つものはいくらだっているだろうに。
どうして……。
興奮する女房をよそに、私は冷静であった。
醜女と噂されている女に文など送ることをする者など、いるのかと。


