「志賀。」

「何ですか大潮さん。」

「先生と呼びなさい。」

「嫌だ。」


日本史の教科書で頭を叩かれる志賀。

自業自得だ。

昼休みに入江くんが教えてくれたとき行っておけばよかったのに行かなかったのだから。


「とりあえずピアス外せ。」

「でもピアスが離れたくないって言うんだよ。」

「敬語を使え敬語を。」


再度叩かれる志賀。

馬鹿みたいにでかい音が鳴る。

痛そう。

でも教室は笑いで包まれる。

女子は志賀くん大丈夫ー、と媚びたような声を出す。

笑いながら。

みんな酷いなあ、なんて思っていると、いつの間にか前の席の人と野村くんが入れ替わっていた。


「野村くん、なんでここにいるの?」

「水城さんの眉間にしわがよってたから。」


人差し指で私の眉間をちょん、とつつく野村くん。

言われて初めて気がついた。


「気づかなかった。」

「無意識?」

「うん。」


真面目な顔で返せば、野村くんは顔をくしゃっとして笑った。

その顔が妙にかわいくて普段のかっこいいとはちょっと違ってなんだかギャップ。


「ねえねえ野村くん。」

「ん?」

「なんで志賀はさ、私なんかと友達になってくれたんだろう。」


初めて志賀と話したときから気になっていたことをなぜか野村くんに尋ねた私。

案の定野村くんは目をぱちぱちと瞬きさせて驚いていた。


「あ、ごめん。野村くんに聞くことじゃなかったよね。」

「自分と似てたからじゃないかな。」

「…え?」


小さく笑った野村くん。

彼にそれってどういうこと?と聞こうとした瞬間に志賀のお説教タイムが終わり、野村くんもじゃ、と言い残して自分の席に戻っていった。

私と似てるって、どういうこと…?