あと少し少し…

「どこに...いくの.....ですか!?」

ぐいぐいと引っ張られていくのに驚いてなかなか言葉が出てこない。

「え？あ。ごめん。」

優治は自分が思いきり由佳を引っ張っている事に気付かなかったらしい。

パッと優治は自分の手を離した。

その時優治が眉毛を少し下げた事に由佳は気付かなかった。



「そこにさ、コンビニあるからそこで何か買って喰おうよ。」

「うん。いいね。」

2人はおにぎりと１番安いお茶を2個ずつ買って塾の近くの公園のブランコに座って食べた。

「なあ。お前の名前って何て言うん？」

「は？今更？」

「いや〜なかなか聞くタイミングつかめないでさ、いつかは聞かなきゃいけないだろうと思って。」

「伊藤由佳。」

「そう。じゃあ伊藤って呼ぶわ。」

「うん。じゃあウチは斉藤って呼ぶわ。」

「なんで名前知ってるん？」

「塾長から聞いたの。」

「あっそう〜？」

優治の可笑しな返事に由佳は思わず笑ってしまった。


2人は1時間くらい話をした。

高校の話とか進学の話とか家族とか友達とかの話。

まさか由佳は初日にこんなに優治と仲良くなれるとは思っていなかった。



久々の異性との付き合いでちょっぴり緊張していた由佳。

だけどそれを分かっていたのかは分からないけど優治はとても由佳に対して良くしてくれた。


「よし。じゃそろそろ行こうか？勉強しないと塾長に怒られるぜ」

と優治はわざとらしくしししっと笑った。