秘密の部屋

「はいっ!」


彼が部屋に入ってカーテンを開ける。

今日も夕陽が入ってくる。

あっという間に部屋は

オレンジ色になった。


「どうしてあなたはここにいるんですか?」

「こうでいいから。敬語もいらない。」

「分かった!でもくんづけ!!」

厚くんは笑っていた。

「俺はここで、とくに何もしてない。」

「ただいるだけ?」

今度は悲しそうな顔をした。

「そうだよ。」


「家族は?」

「両親がいるだけだ。」


厚くんは床に寝転がった。

「どうしたの?」

「オレンジ色っていいな。」


私も寝転がった。

天井にはオレンジ色の空があった。

「なんか私たちだけしか知らない空間っていいね。」

「ここは秘密の部屋だから。」

「絶対に内緒にするよ!」

「……あぁ。」

そのときの厚くんの笑顔は

どこか寂しげだった。