「あ、おはよー千尋!」

千尋がクラスに入ると、美雪が寄ってくる。

「おはよ、美雪。」

自分の席に着くやいなや、教室が一瞬で騒がしくなる。

「蓮くーーんっ!!!!」

クラスの王子様、九条蓮も学校に到着。
千尋の早歩きも虚しく、蓮の長い足の歩幅だとすぐに追いつかれてしまった。

ーーーーー……あんにゃろう………。

「ねぇ、蓮君。」

そう言ってクラスの体育委員の女子が蓮に話しかける。

「体育祭のリレーの代表選手になってくれないかな……?蓮君が一番はやいんだけど……。」
「うん、わかった。良いよ。」

そこで輝く王子様スマイル。
千尋にはもはやギャグにしか映らない。

「あー、さすが王子。足も速いとなると何が出来ないんだろう……」

美雪が呆れたように呟く。

「そうねぇ……。」

かく言う千尋も蓮のことをあまり知らないことに気付く。

ーーーー……あいつ苦手なもんとかあるのかな……。

「ねぇねぇ、蓮君。体育祭のコスプレリレー、何着るか決めた?」

取り巻きの女子が蓮の腕を掴みながら聞く。

「え…、そうだなぁ………まだ決めてはいないかも。」
「そうなの?じゃぁ、私達が決めてあげようか?」

女子の下心が丸見えである。
露出度の高い衣装でも着せたいんじゃ無かろうか。

「いや、それはいいよ。自分で決めたいし。皆は当日のお楽しみにしといて?」
「うん、すっごく楽しみっ!!」

女子はキャーキャー騒いでる。

ーーーー私に意見は求めたくせに。

気付かないうちに千尋の頬は少しの熱を帯びていた。