「………はぁっ!?」

広も哲も蓮も千尋もみんな声をあげた。
それぞれ小型のイヤホンマイクを付けていて、卍からの任務中断連絡を受けたのだ。

「何でよ。」
「ターゲットが部屋にいない可能性があってな……。」
「事前に確認しときなさいよっ!!!」

喧嘩しているのは千尋だった。
そんな千尋を蓮は宥め、卍に聞く。

「それでは、家に帰れば良いんですね?」
「あぁ、ありがとう。すまないな、蓮。」
「いえ、では帰還します。」

そう言ってスムーズにイヤホンのスイッチを切る。

「頭領め……」

千尋はまだ恨めしげに顔をしかめている。
仕事の準備を万全にしてきた故であろう。

「まぁまぁ、少し延びるだけでしょ、頭領の言い分によれば。」

と哲も千尋を宥めている。

「そうだな。」

広も哲の意見に同意していた。

「むぅっ。」

千尋は渋々あきらめたようだ。
千尋は軍服の上から羽織っているパーカーのフードを頭に被ると、スタスタと今まで来た道を引き返した。
地下道が近場だったため、目立たない道を歩いて向かっていた。

「それにしても蓮。」

哲が蓮に話しかける。
「ん?」
「対応に慣れてたな。初めてだったら戸惑うと思ってたんだけど。」
「母さんに叩き込まれたからな。あんたはたぶん将来phantomに入隊するんだから。ってな。」
「瑠璃さん、流石だね。」
「メンバーの話もよくしてたよ、母さんは。
性格正反対の双子がいるとか、甘党の女の子がいるとか。」
「…瑠璃姉さんは、良い人だったな。」

なかなか口を開かない広が突然言った。
広は瑠璃を尊敬していた。

それからは、普通の話をしながら家に帰り、広
哲、蓮は女2人が卍を罵っている姿を黙って見ていた。