「全員揃ったな。」

夕方になり、全員がオフィスに集まった。
いつもと違って、軍服を着ているため、緊張感がある。
それぞれの机に今回の任務内容の書かれた資料が置かれていた。
全て卍が作ったものだ。

「その資料に書いてあるとおり、情報の調達は玲と俺で担当する。広と哲と蓮と千尋はターゲットのアジトである地下道に向かってほしい。」

それでは、任務開始。という卍の掛け声でみんなそれぞれ動き出す。
玲と卍はオフィスから出て、パソコン画面のいっぱいならんだ部屋へと向かう。

「頭領。」
「何だ、玲ちゃん?」
「蓮君大丈夫でしょうか?まだ慣れてないでしょうし……こちらで情報収集をやっていた方が……。」
「それもそうだが……」

卍は少し上を向きながら答える。

「瑠璃の子供だ。色々叩き込まれてるはずだしな。」
「……そうですね。」

玲は人間観察に長けていた。
いつもは無口なことも多いけれど、その分人を観察している。
玲から見た蓮は初めての場所に戸惑っている様子もなく、堂々としており、真面目な青年に見えた。
瑠璃の面影さえ感じた。

ーーー信じられる。

そう思った。

そんなことを思っているうちに、部屋に着く。
卍と同じタイミングで席につき、マイク付きのヘッドフォンを装着し、パソコンの電源をいれる。
すると……

「あれ?」

卍の方から声が上がる。

「どうかしましたか?」
「…………ターゲットがいないかもしれない……。」
「……は?」

法律的にはご法度なのかもしれないが、国からの許可を得て、ターゲットのいる地下道の上に精密な盗聴器を仕掛けていたのだ。

「なんの音もしない……。いつもなら何かしらの音がしてるんだけどな……。」

玲もヘッドフォンに耳をすませた。
何も聞こえてこない。

「ホントですね……出掛けているのでしょうか……。」
「んー、今日は撤退かな……。」

卍はそう言うと、マイクに向かってしゃべり始めた。

「ーーーーーー。ーーーーー!!ーーーーー…」

なぜか何やら揉めていた。