ここ数時間ですっかり学校での蓮のイメージは無くなっていた。
蓮は気さくで良い奴。
千尋はそんな印象を持っていた。

(あと、少し腹黒い……)

そんなことを思っていると、蓮がケーキを持ってきた。
チーズケーキだ。
千尋の大好物である。
目が一気に輝いた。
千尋の前にケーキが置かれるやいなや、すぐさま手を着ける。

「………。」

蓮はそんな千尋を見て微笑んだ。

(可愛いな………ハムスターみたいで。)

「………何よ。」

いつの間にやら千尋はチーズケーキを食べる手を休めて蓮を見ていた。

「ん?あぁ、ハムスターみたいだな。って。」
「はっ?」

可愛いな…と思っていたことを言わなかったので、千尋の怒りを買った。

「むー…ハムスターって。私はあんな小さく見えるの?あんたの目は節穴ね。」

千尋は身長的には女子の中で大きい方だ。165ぐらいあるんじゃ無かろうか。
少なくとも、そこらへんの女子よりは高い。
蓮は今年測っただけでも189ぐらい。
成長期真っ只中なので190は抜いていると思われた。

(小ささを言ってるんじゃないんだけどな…)

蓮はそれも言わない。
なぜって?そっちの方が面白そうだから。
千尋はピーチクパーチクなにやら言っているようだったが、蓮は全て聞き流していた。
思っていることはただ1つ。

(千尋がいるかぎり、退屈しないな…)

んで、もうひとつ。

(……可愛いしね。)

その後結局聞き流すことは困難になり、千尋と口げんかをしながら楽しく夕方まで過ごした。