「立石先輩に話さないの?」
心配そうに訊ねる麻美。
「彼氏でしょ?」
そうだよね、言わなきゃなのはわかってる…。
でも、もしそれで
先輩に軽蔑されたら?
あたし…
どうやって生きていけばいいの?
たっくんにまわした手に思わず力が入る。
身体を小さくして自分に問いかけた。
ー先輩に話せる?
ー先輩は受け入れてくれる?
ーこんな汚いあたしを?
そうだ、あたしは…
汚いんだ、ずるいんだ。
幸せになっちゃいけないんだ。
幸せでいちゃいけない人間なんだ。
「ぁ、麻美…涼ちゃ………。
あたし…別れる…。」
震える声でそう言った。
本当はそんなの考えたくない。
でも…でも…
傷つくのが恐い。
幸せになるのが恐い。
幸せのあとって…
良いことがあった試しがないんだよ。

