いけにえ系男子【BL】



「お前の女はコイツじゃないんだろ?」

敵総長はそう言って総長を見て、それから斜め後ろの彼女さんへと視線を移した。

男だしな、女じゃねえよな。と、どこか……多分隣から聞こえてきたが無視したい。まだ笑ってるし。


「……ああ、確かにその通りだ。けどそいつも渡せない」

手を離せ、と総長がもう1度言う。
けれど変わらずに掴まれたままだし、いまだ潤いたっぷりの目じりを親指が掠める。

その感触に思わず目を閉じる。

1秒足らずの暗闇の中、
乾いた皮膚に同じく乾いた何かが当たる感触がした。


何事だ、と目を開ける。

眼前に居るのは変わらず敵総長。


周りを見渡すと、総長も彼女さんもさっきよりも近くにいた。
それだけで少しホッとできる。


敵総長と総長との間を確認する。

黄色頭は隣に居るし、
謎頭はやっぱり爆笑中だ。
それもさっきよりも酷く。腹を押さえている。


笑っている謎頭と敵総長以外、みな唖然とした表情なのが気になる。