「ただしコイツを貰うがな」
そう言った敵総長の視線の先は俺だし、
彼に顔を掴まれているのも俺だから、その“コイツ”は十中八九俺だろう。
「は?」
「え?」
そんな声があちこちから上がる。
俺も何でと尋ねたい。
……もしかして生贄?
どこかから聞こえたそんな言葉にハッとした。
殴られるんだろうか。蹴られるんだろうか。
他に手を出さない代わりに。
今日、騙された事への怒りとか。
全部俺にぶつけて、俺は徹底的にボコられて。
そんな事、総長は乗らないに決まっているけれど。
だからこそ、それを踏まえての挑発か?



