いけにえ系男子【BL】




どうしよう、怖い!


マジ泣きしそうになったまさにその時。

バーンと金属のぶつかる音がして、薄暗い店内に光が射した。


「タケル!」

無事か!と叫ぶように尋ねながら中に入ってきたのは、俺がずっと待っていた総長だった。


しかし、安否を確認したのは総長だったが、最初に名前を呼んだのは彼女さんだった。

あれ?結局来たんですか?!喧嘩に巻き込まれるかもしれないのに?!
そう叫びたかったのは山々だったが、ホッとしたのと、未だ顔の傍にいる手の所為で声が出ない。



「丁度いい」

敵総長がまた俺の顎を掴みながら総長に話しかける。


「何だ?そいつから手を離せ」

返事を返すと同時に俺の事も気遣ってくれる。

こっちへ向かってくる足音に俺は安堵を隠せない。
少し緩んだ表情は笑顔を作った。


敵総長の舌打ちが聞こえる。
窺うように見上げると、しっかりと彼はこっちを見ていた。

ごめんなさい!場に合わない事は解りきっていますが勝手に顔が動いたのです。

俺の微笑が気に障ったであろう彼に弁明しようにも、やっぱり声は出せないままだ。