うんざりという表現で陶酔できる季節“夏”が訪れる前触れの梅雨入り。



彼女は毎年恒例の如くうんざりと心を踊らせていた。
それは疲労を悦と受け止めるある一種のマゾヒズムと同じ感覚だった。
間違い無く彼女は疲労していたのだ。
彼女を疲労から救い出すのには新たなる疲労が必要だった。


ブラック企業の代名詞ともなる職場の数少ない休日、彼女は外の世界に飛び出した。



それは社会と言える外界とは不釣り合いな格好をした彼女には疲労でしかなかった。
一般的社会ではロリータファッションと呼ばれる姿に身を包み“完全武装”の彼女は同じく“完全武装”の友人に会いに。

一般社会の視線と日光は彼女にとって疲労でしかなかった。

それを彼女は“完全武装”の道具、日傘で遮った。

一般的社会の音は彼女にとって疲労でしかなかった。

それを彼女は“完全武装”の道具、音楽で遮った。



しかし皮肉にもイヤホンから流れる音楽そのものが一般的社会のものであった。
それに彼女が気づく事はなかった。