終わりのお話【短篇】

仕事場に着くと、黙々と仕事をするのです。それが決まり事なのです。細胞とはわかりますか?体を作っているもので、寄せ集めてAさんは出来ています。しかし、Aさんも会社の細胞なのです。一つ位無くなってもどうという事はありません。古くなると捨てられるのです。ただ捨てられるまでは黙々と働くのです。仕事が終わると、また電車に乗るのです。夜の電車は車窓に自分の姿が映るのですが、あまりの弱々しさに溜め息が出るのです。車窓等見ないように、必死で携帯電話を触るのです。家に戻るとご飯を食べるのです。お風呂に入るのです。テレビも見るのですが、あまりのくだらなさにリモコンを常に動かすのです。リモコンは手に持ったままです。寝る時間が来ると布団に入ります。寝る時間はおよそ決まっているのです。何故かと言うと、明日もまた全く同じ事をしなければいけないからなのです。そして時々交尾をするのです。気に入ったAさんがいると一緒に暮らしたりもするのです。でも大抵は途中で後悔するのです。



この辺りまで来ると、
聞いている子供の顔が、
ちっとも楽しそうではない事に
大人達は気付き始めました。

もちろん子供は
『つまらない』と感じています。

大人達もちっとも楽しく
ありませんでした。

一人の大人が話に割って
入りました。