(原田)「京都に眠る秘密の財宝をこれからひとつずつ
盗んでやる。捕らえてみろ。怪盗変面」

(山本)「変面?なんだそりゃ?」

(原田)「あいつだったらやりかねない。京都には
隠された財宝が腐るほど眠ってるって言うじゃないか。
あいつの有能さは狂気じみていたからな」

○舞台、夜(回想)
学らんを着て金髪のリージェントの藤原、
白い顔に赤い隈取の目、長い赤鉢巻。
上着を脱ぐと背中に刺青『狂鬼』。
一気にバック転を三回して前方に三回転。
そのまま客席へ。「きゃー」の悲鳴と逃げ惑う客席。

○元の撮影現場
(修学旅行生)「すいません写真とって良いですか?」
(原田)「(我に返り)ああ、いいですよ」
山本も一緒に立ち上がってポーズ。

○撮影所、食堂
おいらん姿の木村。町娘の高田。
農民の子ども姿の太一と愛、食事をしている。
原田と山本、トレイを持って隣の席に座る。

(木村)「怪盗変面が出たんですって?
山本さんに聞きました」
(原田)「もうしゃべったのか」
(山本)「あ、すまん。さっきな。だって、変面じゃ、
やっぱりおかしいよなあ?」

木村、高田、子ども達うなづく。
原田一人憮然として食べ始める。
(高田)「あのな、へんめん、てなんやの?」
(子ども達)「へんめん!」

皆顔を見合わせる。
原田一人黙々と食べている。
(山本)「すまん俺が悪かった。意味も知らんと、
怪盗変面が来るぞと言うてしもうた、すまん原田。
教えてくれ!変面てなんや?」

皆原田をじっと見詰める。
原田もくもくと食べている。
おもむろに水を飲み、立ち上がる。

(原田)「中国の芸人さんのことや。大昔からある
大衆芸能のひとつ、・・・こうやって」

原田、顔を次々とめくる格好をする。
(原田)「こうやって、次々と布のお面を張り替えて、
何十人もの役をやりきる一人芝居のことだーっ!」

原田、狂ったように顔をめくっている。
(山本、木村)「わかった、わかった」
(山本)「(周りを恥ずかしそうに見渡しながら)まあ座れ」

皆、しらけて食事をし始める。