戸惑いの姫君と貴公子は、オフィスがお好き?―特別編―



「――でしたら、そこに俺の姿は映っていましたか?」

「え?」

「あれは令嬢の半裸と、誰か他の男が見えないようにシーツに包まっていただけですよ。
あのアングルにしても不自然でしょう?あれほどベッドの遠くから2人を映すのならば、第3者がいることを暗示しています。
そもそも俺だったら、怜葉さんの身体や色っぽい表情を他の男には見せませんがね」

御託を並べると途端にきょとんとする怜葉さんは、やはり可愛らしい。


「うっ、うそよ!
だって、彗星の身体にあるホクロ、奥さんが知らないの?って電話が!」

「ああ、それは典型的な揺さぶり文句ですよ。
当の俺ですら、自分の身体にあるすべてのホクロなんて把握していませんが?
無論、あなたの全身あるホクロはすべて知っていますがね」

「もう!ほんとやだ、ロボ」

「ええ、ロボット男に惚れられたのが運のツキですよ。
俺は家族と仕事にすべてを費やしていますから、下品な女などどうでも良い」


憮然としていた彼女も、とうとうプッと吹き出して笑いはじめた。


「ふふっ、そうだったね、……子供みたいに疑って、ごめんなさい」

「いいえ、怜葉の愛情を感じたので良しとします」

「なにそれ」

「嫉妬は愛情の裏返しだから」

「……いつも論理的なのは、イヤ」

「貴方を失わないための手段のひとつですから」


――やはり怜葉が一番美しい時は、屈託なく笑う瞬間だと実感する。